TOP特別連載企画木津自然農 第二回 

木津自然農 第二回



「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」
そんな農業があるというのだが・・・。

木津自然農
細谷泰高

第二回

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遅まきながら梅雨がやってきて
木津の地でも田植えが始まった。


この6/16(日)に田植えが始まった。
総勢十数人ほどが集まって、梅雨の晴れ間のぎんぎらぎんの炎天下のもとでのことだ。
帽子を忘れた記者は、すでに干からびはじめている脳からさらに水分が蒸発していくのを感じて、設置されたテントに逃げ込んでは息をつき、勇を鼓して日盛りの中に出て行き、作業を眺めるというのを繰り返したのだが、皆さん完全防備の上とはいえ、まったく影のない田んぼの真ん中で時折にぎやかに、そしてあとは黙々と作業を続けておられる。

田植えといえば、水を張った田んぼ。
そう思っていたけれど、彼らが苗を植えていくのは水もなく、泥でさえない乾燥した田んぼなのだった。
見ているとまるで畑に何かの野菜を植えているようにしか見えない。だが彼らが植えているのは四月ごろから苗代で丹精して育てた青々とした苗だ。秋には頭を垂れる稲になるはずのあれである。
田んぼの中に一本のロープが張られ、それを目安にして真っ直ぐに並ぶように苗を植えていく。
それぞれの間隔は目印の入った金属のパイプを物差しの代わりにしているようだ。
耕すことをしないから土は固い。そこでのこぎり鎌でまず穴を穿ち、そこに苗をやさしく置くように植えていく。
四五人が一定の間隔を空けて横一列になって黙々と作業はつづく。

太陽が照りつけようが、雨が降ろうが、
田植えは続くのだ。


よく見ると田んぼの中に無数の朽ちかけた草が横たわっている。この田んぼにかつて繁茂していた草たちなのだが、
刈られて今では苗たちの大事な栄養分になるべく大地にゆっくりと還ろうとしているところだ。
肥料を与えることをしない自然農では、これらの草たちが大切な養分になる。
外部から持ち込むものをできるだけ少なくして、この田んぼの中のことは、この田んぼの中のもので賄っていく。
その実践のひとつのかたちが、これらの朽ちかけた草たちということになる。

翌週の日曜日も田植えは続いていた。
先週と打って変わって、梅雨らしいどんよりとした空からぱらぱらと雨が降っている。
時折ざっとくる。こちらは慌てて合羽を着込むのだが、
田んぼの人たちは意にも介さず黙々とまた作業を続けている。
太陽が焼こうが、雨が打ちつけようが、風があおろうが黙々、黙々。ひとりおたついているのが、恥ずかしくなってくる。

耕さない、農薬も肥料も撒かないとはいっても
まったく手間がかからないということではない。


先週と違って田んぼにところどころ水が浮いていた。
昨日降った大雨のせいなのかと細谷さんに聞くと、先週の田植えが終わった後、水を張ったのだそうだ。そしてまた水を抜いて田植えを再開したという。
「水が張ってると植えにくいですからね」と細谷さんはこともなげに言うのだが、田植えのたびに水を張ったり抜いたりとは、
結構手間のかかること。

田植えも専用の機械でぱったんぱったんと簡単にできるご時勢なのにと思わないでもないが、手間を省くこと、効率を求めることで発展してきた農業に対するひとつの疑問符がこの地で行われている自然農というものだとしたら、その程度のことはなんでもないということなのだろう。
雨が激しくなった。作業はまだ続いている。
傍観者はついにたまらず退散することにした。
翌日また行ってみると、美しく苗が整列する田んぼには水が一面にたたえられ、梅雨の晴れ間の白い雲を映し出していた。

(つづく)

木津自然農集合日毎月第三土日 10:00頃から
場所JR木津駅のすぐ東に広がる農地 (地図)  
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